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「こんなはずじゃなかった」
 自分ではるんるんの順調な人生だと思っているのですが、どうも他人からは波瀾万丈の生涯だと見られているらしい私。29歳の時にエジプトで行われたラリー競技に出場しましたが、砂漠でバイクごと大転倒。以来、頭蓋骨の中で妙な反響があり、時々ですが声が二重に出るときがあります。バルタン星人に変身した瞬間に居合わせた人は皆、「なんて激しい人生なの」と唖然としますが、私はにっこり。「中国の民族音楽のホーミーみたいでしょ♪」。ものは考えようです。
 2度の離婚を経験したということを知った人も、「あらまあ、それは・・・」と、返す言葉がなくなるようです。更に3度目の結婚をしてしまったと知ると、呆れて”勝手にして”となりますが、さすがの私もこれは「こんなはずじゃなかった」部類に入ります。
  どんなことでも妥協を許さないのは昔からですが、一番恐れていた離婚を度重ねると・・・、3度目の離婚も恐れなくなるからでしょうか、肩から力が抜けてもっと楽しい結婚生活になっていく気がします(ヤケではなく、ホントなのです。あまりいないでしょうが、3度目の結婚の人なら分かってくれるかも)。
  そう、振り返ると私の場合、どの結婚も”一緒にいるときはめちゃくちゃ楽しかった充実婚”でした。イヤなことは時と共に忘れてしまうくらい些細なものであり、むしろ一緒に居た時に二人で創り上げたモノの素晴らしさに感動してしまいます。バイクショップを開いたり、ライダーの憧れである8時間耐久ロードレースに出たり、パリダカールなどの砂漠の海外ラリーに幾度もチャレンジしたりと、常に夢を追いかけ、叶えてきました。だからでしょうか、お互い実にサバサバ。
 昨年結婚した8歳年下のパートナーは、最初から農業に興味を示し、驚くほど畑や花壇や田んぼに通ってくれていますが、家造りに道路造りにHP作りとな〜んでも出来てしまうので、まさに10人力。自分の住んでいる処を「いろんな人がほっとする為に気軽に集まれるような空間にしたい」と思っている私にとっては、なくてはならない人でしょう。昨日は近くの牧場に我が家にやってくるポニーを見に行きました。「可愛い!この子ならみんなに可愛がってもらえるね」という私に「飼おう飼おう」と賛同してくれる夫なんて・・・いやしません。
 不満はほとんどありませんが、最近、「こんなはずじゃなかった」という事がありました。北海道までツーリングに行こうという話しになったのですが、1000CCのバイク借りていこうかなという私の横で寂しそうな彼。なんと400ccまでしか乗れない中型免許だったのです。という訳でこれからのバイク旅は私が運転して彼が後ろに乗るタンデムツーリングになりそうですが、これは初めての経験なのでワクワク?
  「こんなはずじゃなかった」を「これでよかった」に転換させるコツは、”やってきたことを徹底的に楽しむこと”に限ります。さて、バイクもいいけれど、ポニーと行く四国八十八カ所巡りなんていうのもいいかな〜と思う私の横で、「馬車がいいよ!ポニーに一輪車牽かせよう」と騒いでいるダーリン・・・この人ならば3度目の離婚はないかも?
 
Profile
山村レイコ
ライダー
1957年 東京都生まれ。幼い頃から野山を駆け回り続けるアウトドア派エッセイスト&国際ラリースト。18歳に旅した日本一周バイクツーリングの旅日記がきっかけでバイク・車・旅関係の著述活動が始まる。29歳より「パリ・ダカール」「ファラオ」などの砂漠のラリーに多数出場。1997年に初完走したパリダカでは女性クラス優勝。10年前より富士山麓に住み、自然農の米作り(2000年に就農)にも精を出す自称「自然回帰型生活びと」。趣味はゴミ拾いの散策とトレッキング。著書に『朝霧高原〜風と暮らす』(産経新聞社)『砂の子』『恋ごころ旅ごころ』(いずれも晶文社)他。暮らしぶりはHP
http://www.fairytale.jp)で。
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